
暗号資産(仮想通貨)売買・FXと並んで有名な投資方法が「マイニング(採掘)」です。
パソコンに搭載する「グラボ」の処理能力を利用する方法(GPUマイニング)は、特に人気があります。
しかし、PCパーツや電気料金プランに関する知識がないと、採掘報酬を日本円で換算した場合「万年赤字」となる場合もしばしばあります。
赤字リスクを想定するとなかなか手がでない・競争が激化しているので今からでは利益を出せないかも…と、マイニング参入を控えている人も多数いるのではないでしょうか。
PCパーツ知識に抵抗のあるかたにも分かりやすく、マイニングにかかる電気代・節約のコツを解説します。
- 電気代の計算方法&具体例
- GPUマイニングで電気代を安くする方法
- おすすめ電気料金プランの紹介
Contents
マイニングで回収すべき費用
マイニングを「投資」と考えるときに重要なのが、投資費用の回収です。ここで言う投資費用とは、電気代に限ったことではありません。以下の費用の合計をマイニング何か月目で回収できるか、それが重要です。
②電気代…マイニングの消費電力分
③設備費…クーラー代等、環境にかかる費用
ここで挙げた②・③の費用は、①と密接に繋がっています。
原則として、コンピュータは性能が上がるほど電気代がかかります。パソコンで採掘(GPUマイニング)するのなら、性能・省エネ性のバランス良好なパーツを選ぶ必要があります。
また、マイニング投資の利回りが悪くなりやすいのは「夏」です。
コンピュータである以上発熱は避けられず、温度が上がりすぎると故障の原因になるので、暑い季節はクーラーが欠かせません。
自宅の一室・あるいは自室でマイニングをしているなら、なおのことです。
GPUマイニングする場合、単位時間あたりの発熱量は、これもやはりPCパーツ(=グラフィックボードやCPU)の性能に影響を受けます。
つまり、①の段階でPCパーツまたはASICの性能と価格のバランスを熟考することが、電気代ひいては費用回収期間の短縮に繋がります。
十分に知識をもって初期投資に臨めば、年間数万~数十万円の電気代節約をすることも可能です。
マイニング用マシンの消費電力計算
GPUまたはASICマイニングの消費電力を確認する前に、一般的なパソコンの電気代を調べてみましょう。
一般的なパソコンにかかる電気代
BTOパソコン販売の大御所・ドスパラの公式ブログで、2016年に一般的なパソコンの電気代の算出例が出ています。
※一般的な家庭用PCの消費電力・電気代の概算(8~10時間/日・22円/kWhで計算)
ゲーミングPC | 一般的なパソコン | ノートパソコン | |
消費電力 | 220~280W | 100~150W | 20~30W |
電気代/月 | 約1,469円 | 約528円 | 約132~198円 |
電気代/年間 | 約17,628円 | 約6,336円 | 約1,584~2,376円 |
参考:ドスパラ公式ブログ下記記事
「デスクトップパソコンの消費電力」
「やっぱり気になる!ゲーミングPCの電気代とは」
ここで確認できる通り、ゲーミングPCが一般的なパソコンの約3倍近い電力を消費します。
ゲーミングPCの最大の特徴は「グラフィックボード(グラボ)を搭載していること」ですが、これはGPUマイニングにも共通することです。
したがって、マイニングの電気代の目安とすべきなのは、ゲーミングPCの電気代です。
加えて述べると、表で紹介している金額は稼働時間8~10時間/日と考えたものです。
マイニングは24時間365日マシンを稼働させていることが前提なので、その消費電力差も考慮しなければなりません。
消費電力の基本計算式
自分でマイニング専用のパソコンを作る・BTOで発注する場合、電気代算出のために消費電力を把握しておく必要があります。
まずは「W(ワット)」と呼ばれる、PCパーツそれぞれに表記されている消費電力の値を確認しましょう。コンピュータを構成する全てのパーツのワット数が分かったら、これを合計します。
月間消費電力はkWhで表記され、〇円/kWhという価格設定をもとに電気代が算出されています。
とはいえ、PCパーツの消費電力をそれぞれ確認するのは大変な手間です。そこで紹介したいのが、消費電力計算ツールです。
OuterVision® Power Supply Calculator(英語)
モニタ込みの電力計算が出来、高機能モードではオーバークロック・グラボ複数枚刺しのマシンの計算にも対応しています。次の項目で、実際に計算してみましょう。
マイニング用マシンの消費電力&電気代試算(パソコン・ASIC)
ここで、GPUマイニングが出来る初心者向けPCのスペックを挙げます。
- CPU: Core i5-8400 プロセッサー(intel)
- グラフィックボード:GeForce GTX 1080 Ti
- メモリ:DDR4-2400 4GB×2
- その他:SSD搭載/ケースファン2個/24インチディスプレイ使用
ゲーミングPCとしては極めて性能が高く、4K対応ゲームやVRも楽しめる仕様です。
左上で「Basic」タブを選択し、簡易計算モードで調べています。24時間稼働させると478W、電源パーツの推奨容量は528Wとなっています。
ここから、22円/kWhで30日間マイニングした場合の電気代を計算してみましょう。
消費電力(kWh):478W÷1,000×24時間×30日
=344.16(kWh)30日間の電気代:344.16kWh×22円
≒7,571円
※これは一例であり、マイニングする暗号資産(仮想通貨)の採掘難易度によって変わります。
次に、ASIC(マイニング専用集積回路)を見てみましょう。
ASICはパソコンよりも採掘効率が良く、自分で部品を組み立てたり指定したりする必要もないため、マイニング中~上級者に人気があります。
ビットコイン・アルトコイン各種のマイニングで人気のAntminer S9は、最高で消費電力1340Wと公表されています。
30日間稼働させると、計算式・電気代は以下の通りです。
消費電力(kWh):134.0W÷1,000×24時間×30日
=964.8(kWh)30日間の電気代:964.8kWh×22円
≒21,225円
一例として挙げたゲーミングPCのおよそ3倍にも及ぶ電気料金です。
パソコンでマイニングする場合も、グラボ複数枚刺し(SLI)やその他パーツカスタマイズによって、ASICに匹敵する電気料金となる可能性は十分あります。
GPUマイニングで電気代を節約する方法
マイニングにかかる電気代の試算が終わったところで、パソコンでの暗号資産(仮想通貨)の採掘を行う場合(GPUマイニング)にしかないメリットがあります。
それは、知識と工夫次第でコストをかけずに電気代を抑えることが出来る点です。もしASICで「電気代が高い・利回りが悪い」と感じた場合、本体をまるごと買い替えるしかありません。
GPUマイニングで電気代を抑えるテクニックとして、以下の3つが挙げられます。
- 省エネ性の高いグラボを選ぶ
- 性能のよい電源パーツを搭載する
- GPUの処理能力を制限する
それぞれ解説していきます。
方法1:「ベンチマーク」ではなく「ワットパフォーマンス」で選ぶ
グラフィックボード(グラボ)を選ぶとき、通常は3DMark等のソフトを使った「ベンチマークスコア」を重視します。
自作PCの情報誌・ウェブサイトなども、左記スコアでGPUやグラボの性能評価をするのが一般的です。
しかし、マイニングにおいて重要なのは「ワットパフォーマンス」です。
ワットパフォーマンスとは「消費電力あたりの性能」を指します。この数値が高いほど、低い電力で高いハッシュレート(採掘能力)を実現できます。
つまりワットパフォーマンスが良い=高利回りが期待できると解することが出来ます。

- 1位:GTX1080(180W)
- 2位:GTX1080Ti(250W)
- 3位:GTX1070(150W)
2018年5月現在のGeForce系最新GPUはGTX1000番台で、なかでも1070・1080は省エネ性・高い処理能力の両方を実現したハイエンドモデルです。
一方、Radeon系GPUにおいては、必ずしもワットパフォーマンス重視で選ばれているわけではありません。
GeForce系よりも低めの性能ながら廉価であるため、初期投資の安さ(=入手難易度やメーカー価格)重視でマイニングに採用されることが大半です。
実際に、マイニング機器のレビューを掲載しているCryptoCompareで人気のRadeon系GPUを確認してみましょう。
RX480・次いでR9 380が人気です。
2018年5月現在、このGPUを搭載したグラボは極度の品薄状態です。マイニング特需が終わるまで、GeForce系GPUで採掘するのが現実的だと言えます。
方法2:電源パーツは「80PlUS GOLD以上」を選ぶ
BTOパソコンの注文・あるいは自作する際は、電源パーツの表記を確認しましょう。
電力変換効率を5段階で評価した「80PLUS認証」が重要な指標となります。
80PLUS認証とは、電化製品の省電力化推進を進めるプログラムによる基準です。電源パーツにおいては、コンセントから取得した電気をどれだけロストせずに利用できるかによって、評価が変わります。
80PLUSのランク (昇順) | 定格100%時 電力変換効率 |
80PLUS | 80% |
80PLUS BRONZE | 82% |
80PLUS SILVER | 85% |
80PLUS GOLD | 87% |
80PLUS PLATINUM | 89% |
80PLUS TITANIUM | 90% |
「80PLUS」と「80PLUS TITANIUM」だと、10%も変換効率が異なります。電気代が10,000円/月の場合は毎月1,000円の差が出ます。
とはいえ、TITANIUM認証のものを選ぶと予算オーバーになる可能性があります。
BTOパソコン・自作のいずれにおいても、GOLD認証のものがお手頃価格で搭載できるため、おすすめします。
方法3:GPUパワーを制限する(上級者向け)
グラフィックボード(GPU)の消費電力・処理能力に一定の制限をかける方法があります。 「ダウンクロック」「パワーリミット」と呼ばれる方法で、ヘビーゲーマーが好んで行う省エネテクニックです。
グラボメーカーのMSIが提供する「AFTERBURNER」というツールを使うと、簡単に設定できます。
デメリットとして、採掘能力(ハッシュレート)が下がります。
どのくらい下がるのかはGPUの種類・採掘する暗号資産(仮想通貨)によって変化します。ある程度マイニングに慣れてきたかたにおすすめします。
電力自由化を利用する―お得な電気料金プラン紹介
電力自由化によって、電気代プランの選択肢も広がりました。
中には「マイニング向けプラン」を用意している会社もあります。数か月~年単位でマイニングを続けるのなら、プラン変更を検討しましょう。
マイニングにかかる電気代試算(一般的な電力会社の家庭向けプラン)
まずは、関西電力・東京電力の各家庭向けプランで料金試算をしてみましょう。
初心者向け構成でのGPUマイニング(グラボ1枚刺し)を想定します。
GPUマイニングにかかる月間電気代の一例(350kWh/月と仮定)
関西電力(従量電灯A) | 東京電力(従量電灯B) | |
内訳 | ~120kWhまでの料金:2402.45円
3段階目の料金:5389.2円 300kWh超過分:1497.0円 |
~120kWhまでの料金:2342.4円
3段階目の料金:4680.0円 300kWh超過分:1501.0円 40Aの基本料金:1123.20円 |
合計 | 9288.65円 | 9646.4円 |
※再生可能エネルギー発電促進賦課金・口座振替手数料・燃料調整費除く。
ここでは、マイニング用PC以外の消費電力を考慮せずに計算しています。
最低でもこれだけの値段がかかると想定しましょう。
おすすめは「Looopでんき」
マイニング向け電気料金プランとしておすすめできるのが、「Looopでんき」の各プランです。なかでも、
- おうちプラン
- マイニングフラット
の2種類は、自宅でマイニングする人に人気があります。
おうちプランの特徴&電気代試算
基本料金なし・従量1段階料金が特徴です。月間消費電力が300W以上なら、マイニングをしない一般家庭のかたでも安くなる可能性があります。
戸建てのお住まいであれば、売電・ソーラパネル設置・Looop電池購入の3条件を満たすことで、1kWhの価格から-5円の値引きを適用できます。
値引き適用前の価格(2018年5月時点)を元に、東京電力で350kWh消費した場合の月額料金を計算してみましょう。※一例です
- Looopでんき「おうちプラン」:26円×350kWh=9,100円
- 東京電力「従量電灯B」:9646.4円…約546円お得
マイニングフラットの特徴
マイニングフラットは、定額+従量料金制のプランです。例えば、40Aのプランを見てみましょう。
- 最低料金:24,680円
- 月間消費が1,000kWhを超えた場合:22円/kWh
超過分料金についても、全国の電力会社の最終段階料金と比較したとき、最安となります。
世帯3人以上が暮らす家でマイニングするかた・マイニング中~上級者におすすめします。
マイニングにかかる電気代のまとめ
ここではGPUマイニングを中心に電気代試算・安くする方法を解説しました。将来的にASIC(マイニング専用集積回路)を導入する際も、電気代を抑える工夫は必要です。
- マイニング用マシンにかかる消費電力を把握しておく
- ワットパフォーマンスを重視してGPUを選ぶ
- 長期間マイニングを続けるなら電気料金プランを見直す
この3点を押さえて、労せず暗号資産(仮想通貨)をゲットしましょう。